「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ」
主人公ポルコ・ロッソのダンディーな名言からも伝わる大人な魅力があふれる『紅の豚』。
金曜ロードショーにて何度も放映され、ジブリファンのみならず航空機ファンまで惹きつける本格派な作品です。
飛行機の部品工場を経営する家で育ち自他ともに認める航空機マニアな宮崎駿監督が自身の想いをたっぷり込めて作った作品でもあります。
今回は宮崎駿監督が参考にした実在モデルの名前や性能、それに加え紅の豚に出てくる印象的な「飛行機の墓場」の元ネタまで詳しくお伝えします。
紅の豚|ポルコの飛行機の名前
それでは早速ポルコの飛行機の名前をご紹介します。
その名前とは「サボイアS.21試作戦闘飛行艇」
飛行機ではなく飛行艇なのです。それらの違いは、飛行機が地上で離着陸するのに対し、飛行艇は水上に浮かぶことができ、水の上で離着陸できる飛行機となっています。
確かに紅の豚ではアドリア海の真っ青な海から気持ちよく飛び立つシーンが数多く描かれています。
紅の豚|飛行機の実在モデルと性能
史実でポルコの飛行艇のモデルになったマッキM.33はカーチスのR3C-2に負けちゃったんだけど、それを破ったマッキM.39にポルコの戦友のフェラーリンが乗ってる。っていうのに宮崎監督の拘りを感じれて凄い好きなんですよね。#紅の豚 pic.twitter.com/vukw2upa2Q
— 鰐軍壮 (@WANIGUNNSOU) November 2, 2018
紅の豚のヒロインであるフィオによって再設計されドナルド・カーチスと死闘を繰り広げたポルコの愛機サボイアS.21試作戦闘飛行艇。
そのモデルとなったのが「マッキM.33」です。
実はサボイアS.21というポルコの愛機と同じ名前の飛行艇がありますが、サボイアS.21は上下に2枚羽がついている複葉機のため、実際モデルにされたのは羽が1枚の単葉機であるマッキM.33と言われています。
宮崎駿監督が小学生のころに見て印象に残っていたマッキM.33をもとに紅の豚が作られたのですが、マッキM.33がどのような飛行艇なのかがわかる貴重なデータがあります。
それが1925年に開かれた飛行艇の速さを競う「シュナイダーカップ」での3位という記録です。
シュナイダーカップは紅の豚にも出てくる、飛行艇乗りであれば誰もが憧れるレース。
マッキM.33はもともとシュナイダーカップに出場するために製作された飛行艇です。
レースに勝つことを目的として作られたものの、当時のイタリアには競争で勝てるパワーを持つエンジンがなかったため、アメリカ製のエンジンがつけられました。
最大速度320km/hという性能を持ち、新幹線の速さとちょうど同じくらいと考えるとむき出しの飛行艇に乗るのはかなり大変なことが想像できます。
作中でもポルコの飛行艇が雲を引くシーンがありますが、雲を引くくらいのスピードで飛行艇を操るポルコの操縦スキルがズバ抜けていることがわかりますね。
紅の豚|飛行機の墓場の元ネタ
アドリア海の飛行艇乗りの熱気あふれる紅の豚の中で、他とは明らかに雰囲気が変わるシーンがあります。
それが「飛行機の墓場」というポルコの回想シーン。
まだ人間だったころ、戦いに生き残った彼が見たのは惜しくも命を失ってしまった戦友や多くの飛行艇乗りがボロボロになった飛行艇と共に空に登り、遠いどこかへ運ばれていくという不思議な場面でした。
紅の豚の喧噪からガラリと変わった飛行機の墓場の元ネタとされているのが1946年に元イギリス空軍のパイロットで後に作家となったロアルド・ダールが出版した「飛行士たちの話」に入っている「彼らは年をとらない」という短編です。
1940年代前半のイギリス空軍パイロットが主人公のお話ですが、作中に飛行機の墓場のシーンに通じる箇所があったので引用してご紹介します。
そのときおれは彼らに気がついた。
はるか前方の上空をよぎって、飛行機が一本の細長い列を作って飛んでいた。一本の黒い線になって、みな同じスピードで、同じ方角へ、ぴったり前の機に続いて飛んでいた。
その列は空のはしからはしまで続いている。彼らはそうして前へ進んで行った。強風を背に受けて進む船のように、ただならぬ気配で前へ前へと急ぐのを見ているうちに、おれはすべてを理解した。
なぜ、どんなふうに理解したのかはわからないが、それを見ているうちに、彼らは戦死したパイロットや航空兵たちで、いまそれぞれの愛機で最後の飛行、最後の旅をしているのだということがわかった。
「飛行士たちの話」ロアルド・ダール
彼らは年をとらない(P197)
宮崎駿監督はダールのファンと公言しており、 ダールの日本語版書籍の解説やまえがきを担当しました。
飛行機の墓場のシーンはダールへのオマージュであり、ポルコの人間時代を表す貴重なエピソードになっています。
作者のロアルド・ダール自身が空軍パイロットだったため、作品には圧倒的なリアリティが感じ取れますよ。
ダール作品のリアリティの高さは宮崎駿監督を魅了し紅の豚のワンシーンになったのです。
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まとめ:紅の豚の飛行機
- 飛行機の名前はサボイアS.21試作戦闘飛行艇
- 飛行艇のモデルとなった機種はマッキM.33
- 飛行機の墓場の元ネタは「飛行士たちの話」に入っている「彼らは年をとらない」という短編
宮崎駿監督の好み全開の紅の豚に出てくるポルコの愛機と、名シーン「飛行機の墓場」の元ネタについて解説をしました。
作品の背景を知ったうえで見ると今まで以上に理解が深まり実感を持って作品に入り込めると思います。
ぜひ今回の情報をもとに紅の豚をお楽しみください。